2050年のカーボンニュートラルと、2030年度温室効果ガス46%削減(2013年度比)の実現を目標に、令和4年に建築基準法の改正も公布されています。

そこで今回は、2024年4月施行予定の防火規制の合理化についてご紹介したいと思います。
これまでの防火規制を見直し、合理化することで木造化できる部分を増やし、二酸化炭素の吸収源となる木材利用の促進につなげるための法改正になっています。

 

専門的な内容にはなりますが、以下、簡単に解説していきます。

 

1.木材の「あらわし」による設計が可能な構造方法の導入

3,000㎡以上の大規模建築物について、これまでは、壁・柱等を耐火構造とすること、3,000㎡ごとに耐火構造体で区画することが必要とされていましたが、2024年4月以降は、木材の「あらわし」による設計が可能な構造方法をとることができるようになります。

 

 

これまでは、木材を石こうボードなどの不燃材料で覆う必要がありましたが、今後は構造部材である木材をそのまま見せる「あらわし」による設計が可能な構造方法が導入されます。

 

上記参考画像のような、あらわしによる木造の使用が可能となります。

 

 

2.防火・避難上支障がない範囲での部分的な木造化が可能に

そして、これまで耐火性能が要求される大規模建築物については、壁や柱、すべて耐火構造とすることが求められていましたが、改正後は、防火上・避難上支障がない範囲で、部分的な木造化が可能となります。

 

改正後は、壁や床が防火区画された場所で、避難上の支障もなければ、最上階の屋根や柱、はり、中間床や壁、柱等を木造にして建築することができるようになります。

 

こちらは参考例になりますが、これまで耐火構造でないといけなかった部分を、上記のように木造にすることが可能となります。

 

3.分棟的に区画された建物の低層部分の木造化が可能に

また、これまでは、防火上分棟的に区画された建物であっても、高層部も低層部もすべて防火規制が適用され、耐火性能が要求されていましたが、改正後は、高い耐火性能の壁や十分な渡り廊下で分棟のように区画された建物であれば、低層部分を木造にすることが可能となります。

 

 

十分な距離の渡り廊下がある、高い耐火性能の壁があるなど、延焼を遮断するような条件が整っていれば、建物の低層部は別棟として扱われるようになり、木造化することが可能になります。

 

4.防火壁で区画された耐火・準耐火構造部分の防火壁設置が不要に

これまでは、木造部分と一体で、耐火・準耐火構造の建築物を計画する場合、耐火構造の部分にも防火壁の設置が求められていましたが、今後は、他の部分と防火壁で区画された1,000㎡超の耐火・準耐火構造部分には、防火壁の設置は不要となります。

 

 

木造部分と防火壁でしっかり区画されていれば、耐火構造部分の防火壁の設置は必要がなくなるということになります。

 

以上が今年4月から施工予定の、木造建築物に関する改正項目となります。

これまでの防火規制が見直され、万が一、火災があった時も安全が確保できる条件であれば、積極的に木材の使用が可能となる法改正が行われています。

 

今後は大規模建築物でも、木材がより積極的に使用されるようになりそうですね。
それにより、デザインの幅も広がっていくかと思われますし、今回の建築基準法の改正で、今後の建物の表情も大きく変わっていきそうです。

 

※画像出典:国土交通省「木造建築物に関する改正項目リーフレット」、「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第69号)について」より引用

 
 
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